あなたの意志を継ぐ人を選ぶ:任意後見制度のメリット・デメリットと活用事例

空き家相談

未来の自分を想像することは、時として不安や疑問をもたらすことがあります。特に高齢期における自分の判断能力や資産の管理についての不安は、多くの人々に共通する懸念点でしょう。そんな中、知って得する制度が「任意後見制度」です。この制度を活用することで、将来的に自分の意思が不確かになった場合でも、信頼する人にサポートしてもらうことができます。この記事では、任意後見制度の基本から、そのメリット・デメリット、活用方法や手続き、さらには実際の活用事例までをわかりやすく解説します。自分の意志をしっかりと後世に継承するための手引きとして、是非このガイドをお役立てください。

1. 任意後見制度とは

任意後見制度は、成年後見制度の一環として設けられている制度です。これは、将来的に自己の判断能力が低下する可能性がある場合や認知症などの症状が進行する可能性を考慮し、自分の財産や生活に関する判断を任意で指定した後見人に委任することを可能とする制度です。この制度を利用することで、本人の意思に基づいて後見人が適切なサポートを提供することが期待されます。

例えば、Aさんが認知症を発症する恐れがあると診断された場合、Aさんは任意後見制度を利用して信頼できるBさんを後見人として選任することができます。

2. 任意後見制度と法定後見の違い

任意後見制度と法定後見制度は、いずれも成年後見制度の中に存在するが、以下のような違いがあります。


●任意後見制度:

・自主的な契約:本人の意思で後見人を指名し、公正証書で契約を締結する。
・選任の自由度:後見人を本人が自由に選べる。
・権限内容の自由度:任意後見人の権限内容を本人が個別に定めることができる。


●法定後見制度:

・家庭裁判所の決定:本人の判断能力が不足していると家庭裁判所が判断した場合に、法定の手続きに基づき後見人が選任される。

・選任の制約:後見人は家庭裁判所が選任するため、本人の選ぶ自由度は低い。
・権限内容の制約:法律に基づいて後見人の権限が定められる。


具体的な違いを例にすると、Cさんが判断能力を失った場合、任意後見制度ではCさんが以前に締結した公正証書に基づきDさんが後見人として活動します。一方、法定後見制度では、家庭裁判所が適切な後見人を選任し、その後見人がCさんのサポートを行います。

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3. 任意後見制度のメリット

任意後見制度を活用することには、以下のようなメリットがあります。


3-1. 任意後見人を本人が選べる

自由な選定:任意後見制度では、本人が信頼する人物を後見人として指名することができます。これにより、後見人が本人の意向や希望をしっかりと尊重し、適切な支援を行う可能性が高まります。

具体例:Eさんが長年の親友であるFさんを信頼しているため、Fさんを後見人に指名することで、Eさんの意向が尊重される安心感を持つことができます。


3-2. 任意後見人の権限内容を個別に決められる

カスタマイズされたサポート:任意後見人の権限や範囲を、公正証書で具体的に定めることができます。これにより、本人の生活や財産に関する具体的な希望やニーズに合わせたサポートを受けることができます。


具体例:Gさんが、自分の不動産に関する取引だけを後見人のHさんに任せたいと考えている場合、そのような権限の範囲を公正証書で定めることができます。

4. 任意後見制度のデメリット

任意後見制度を利用する際には、以下のようなデメリットや注意点が考えられます。


4-1. 任意後見監督人の選任が必須|報酬が追加で発生する

●監督人の必要性:任意後見制度を利用する際には、任意後見人の行為を監督する「任意後見監督人」の選任が必要となります。この監督人は、任意後見人の行為が適切であるかを確認する役割を持ちます。

●報酬の問題:任意後見監督人には報酬が発生するため、このコストが追加負担となります。

具体例:Iさんが任意後見制度を利用し、Jさんを任意後見人に、Kさんを任意後見監督人に指名した場合、Kさんに対しての報酬も考慮する必要があります。


4-2. 任意後見人の報酬は契約次第|依頼先によっては高額になることも

●報酬の変動性:任意後見人の報酬は公正証書での契約内容に基づくため、依頼する相手や契約内容によっては報酬が高額になることも考えられます。

具体例:Lさんが専門家や法人を任意後見人として指名した場合、その専門的なサービスの対価として高額な報酬が発生する可能性があります。


4-3. 任意後見人に取消権は認められない

●取消権の不在:一度公正証書で任意後見契約を結んだ後、本人が後見人の選任を取り消すことは原則としてできません。

具体例:MさんがNさんを任意後見人に指名したが、後にNさんとの関係が悪化した場合でも、簡単に契約を取り消すことはできません。


4-4. 死後事務は依頼できない

死後の制約:任意後見制度は、本人が生存している間のみのものであり、死後の財産管理や遺産分割などの事務を任意後見人に依頼することはできません。


具体例:Oさんが死亡した場合、任意後見人であったPさんはOさんの遺産に関する事務を取り扱うことはできません。

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5. 任意後見制度を利用する際の手続きと必要書類

任意後見制度を利用するための手続きと、それに伴う必要書類について解説します。


5-1. 公正証書による任意後見契約の締結

●公正証書役場の訪問:まず、公正証書役場を訪れて、任意後見契約を公正証書で作成する手続きを行います。

●契約内容の検討:契約内容は、後見人の権限範囲、報酬、任意後見監督人の選任などを具体的に定めることができます。

●必要書類:

・ 身分を証明する書類(運転免許証、健康保険証など)
・ 任意後見人として選任する人物の同意書


5-2. 家庭裁判所に対する任意後見監督人選任の申立て

●家庭裁判所への申立て:公正証書による契約締結後、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。

●必要書類:

  ・公正証書による任意後見契約書

・ 任意後見監督人として選任する人物の同意書

・ その他家庭裁判所が求める書類

具体的な手続きの例として、Qさんが自身の認知症の進行を懸念し、Rさんを任意後見人、Sさんを任意後見監督人として指名したいと考えた場合、まず公正証書役場を訪れて必要な書類を持参し、RさんとSさんの同意を得て契約書を作成します。その後、家庭裁判所へ申立てを行い、正式に制度を利用する手続きを進めることになります。

これらの手続きを進める際は、事前に詳細な情報を入手し、必要な書類を整えることが重要です。また、専門家や弁護士などのアドバイスも活用して、スムーズに手続きを進めることがおすすめです。

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6. 任意後見制度と家族信託の違いや使い分け方

任意後見制度と家族信託は、将来の資産管理や利益の享受をサポートするための制度ですが、それぞれ特徴や適用シーンが異なります。以下に、両者の違いや使い分け方を説明します。


●任意後見制度:

・目的:本人の意思が不確かになった場合(認知症や重度の障害など)に、指定した後見人が財産管理や日常生活のサポートを行うための制度。

・期間:本人が生存している間のみ。

・特徴:後見人は本人の意向を尊重しながらサポートを行う。任意後見監督人の選任が必要。


●家族信託:

・目的:資産の移転や相続をスムーズに行うための制度。信託を設定することで、資産を管理する信託銀行や信託会社などの第三者が、指定した受益者に対して資産を利用・管理する。

・期間:設定した期間や条件に基づく。

・特徴:死亡後の資産管理や分配も可能。相続税対策としても活用される。


●使い分け方:

・任意後見制度は、自身の判断能力が不確かになることを予測して、身の回りのサポートや財産管理を他者に委託する場合に適しています。

・家族信託は、資産を特定の家族や親族に確実に移転させたい、相続税対策を考えている場合など、資産の将来的な利用や移転を第三者に依頼する際に適しています。

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7. 任意後見制度に関する相談先

任意後見制度に関する相談や手続きには専門知識が求められます。以下の方法やポイントで、適切な相談先を探すことができます。


●弁護士:任意後見制度に詳しい弁護士や弁護士事務所が多く存在します。特に相続や成年後見に関する専門家を探すと良いでしょう。

●成年後見人協会:全国に成年後見人協会が存在し、任意後見制度に関する相談を受け付けています。

●家庭裁判所:家庭裁判所には成年後見に関する情報提供窓口があり、基本的な手続きや資料の提出方法などについての相談が可能です。

●相談のポイント:具体的な要望や状況をしっかりと伝え、相談先の経験や専門性を確認してから契約を結ぶことが重要です。

8. 任意後見制度を活用した実例や事例紹介

以下は任意後見制度を活用した具体的な実例を紹介します。


●介護施設の入所に備えるケース:

Tさん(72歳)は、近年、自分の記憶が次第に衰えていることを感じていました。子供は海外での生活を選び、日常的なサポートが難しい状況。Tさんは、将来的に自らの意思で生活の選択が難しくなった際に、信頼している友人のUさんにサポートしてもらうことを希望。任意後見制度を利用してUさんを任意後見人として指定。この制度の下で、Tさんが介護施設に入所する際の手続きや、その後の資産管理をUさんがサポートすることが確定しました。


●身寄りがない方の施設入所等について:

Vさん(68歳)は独身で、親族もほとんどいない状態。高齢になるにつれ、自身の将来を心配し始めました。Vさんは、地域の成年後見人協会で相談をし、任意後見制度を利用して協会のメンバーを任意後見人として選びました。Vさんが日常生活でサポートを必要とした場合や、施設に入所する際の手続き等、さまざまな事務手続きを後見人がサポートすることとなりました。

まとめ

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私たちの未来や資産を守るために「任意後見制度」は非常に有効な手段となります。この制度は、成年後見制度の一環として、将来の判断能力の低下を予測し、事前に信頼する人を後見人として指定することが可能です。本記事で学んだように、任意後見制度のメリットは、本人の意向を尊重しつつ、具体的なサポート内容や後見人を選べる点です。一方、報酬や後見人の権限範囲には注意が必要です。手続きや実際の活用にあたっては、専門家との相談が推奨されます。この制度を適切に利用することで、自分の意向や生活品質を保ちながら、適切なサポートを受けることが期待できます。自分の将来をしっかりと見据え、任意後見制度を上手く活用しましょう。



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